おおいた就農女子応援ツアーレポート

9月29日(日)、おおいた就農女子応援団で初となるバスツアーが開催され、農業に興味のある16名の方々が参加してくれました。

就農するにあたって「何から始めたらいいの?」「どれくらいお金が必要なの?!」と疑問は尽きないもの…そこで! 就農女子の先輩である2軒の女性農家さんを訪ね、農業を身近に体験してもらいました。

ツアー当日、バスの中の様子

訪問先① おおいえ農園(臼杵市)

大分駅から出発したバスの中で、さっそく仲良くなった参加者の皆さん。
楽しくお喋りしながら最初に到着したのは、臼杵市野津町でピーマンを栽培している〈おおいえ農園〉です。30歳の時、知識も経験もゼロから農業を始めたという大家めぐみさんが経営しています。

おおいえ農園へ向かう参加者の皆さん

まずは、そんな大家さんが就農するまでのお話を聞かせてもらうことに…

大家さんが野津町での就農を決めたのは、女性がひとりで農業を始めるのは「大変だよ」と悲観されることが多い中、野津町の人々は「元気でいいね!」と言って応援してくれたからだとか。

そう言ってくれる温かな人々に見守られて、起業の道を選んだ大家さんの経験談には、農業経営と向き合うためのアドバイスがたくさん盛り込まれていました。

例えば、「十分な資金を準備せず始めたので、数年間は経営が苦しかった。
失敗して収入が少ないときでも生活を送っていくためには、500万円以上の開業資金があったほうがいい」というエピソードからは、経営の知識を身につけておくことの大切さがリアルに伝わってきました。

参加者へ講話をおこなう大家さん

とはいえ「私の場合は自分で農園を経営することが目標でしたが、家庭菜園の規模で直売所に出荷する方法もおすすめだし、それぞれのスタイルで始めたら良い」と教えてくれた大家さん。
就農といっても様々な選択肢があり、“どんな風に農業と関わっていきたいか”を考えることこそ、就農への第一歩になりそうです。

また、就農後に経験した結婚・出産の話題にも触れながら、女性ならではの目線で、農業のやりがいをたっぷりとお話しいただきました。

Q:有機栽培に挑戦したいのですが、難しいですか?

A:体に良いし、農薬にかかるお金が節約できるし、私も憧れていました。でも、実際は使わないと収穫量が減ってしまうので、適切に使っています。

Q:農協を通さずに出荷できますか?

A:個人で販売する方法ももちろんあります。ただ、お客さんと連絡をやりとりする手間などがかかるので、私の場合はその手間を野菜にかけたくて、農協に出しています。

Q:従業員はいますか?

A:パートさんが常時1名います。また、繁忙期には障がい者福祉施設の方々にも作業をお願いしています。

お話を聞いた後は、最盛期を迎えたピーマンの収穫体験!

ピーマンの収穫体験をおこなう参加者

ピーマンの収穫体験をおこなう参加者

ピーマンの収穫体験をおこなう参加者

〈おおいえ農園〉では、480坪余りの畑でピーマンを育てています。平均的な住宅が40坪くらいと考えると、およそ12軒が建つ土地。その広さにも驚きつつ、参加者の皆さんがいちばんビックリしていたのは、人の背丈を超えたまるで木のようなピーマンの姿!これも収穫量を上げる工夫なのですが、特に家庭菜園の経験がある方は「こんなに大きくなるの?!」と驚きを隠せない様子でした。

その葉っぱをかき分けながら、参加者の皆さん全員で1時間ほどかけて収穫。作業をしていると、微妙な色や形の違いから害虫や日差しの強さ、水の影響にも気づいたようで、サポートにまわっていた大家さんや農場スタッフの方にたくさんの質問が寄せられていました。

ちなみに、この日のランチは〈KITCHEN まぐねっと〉につくってもらったオリジナル弁当。おかずにピーマンの肉巻き、ツナ和え、おひたしなど〈おおいえ農園〉のピーマンをたっぷり使ったメニューに大満足でした。

〈KITCHEN まぐねっと〉のオリジナル弁当

訪問先② (株)グリーンマム農園(豊後大野市)

続いて訪ねたのは、豊後大野市三重町でキクの栽培に取り組んでいる〈グリーンマム農園〉。個人事業主だった大家さんに対して、こちらは若杉翔子さんが夫の泰嗣(やすし)さんと経営している法人です。

優しく微笑むグリーンマム農園の若杉翔子さん

「学生時代から農業がしたかった」と語る若杉翔子さんは、宮崎大学農学部を卒業後、大分県庁の職員となり、農林水産研究指導センターで活躍していました。そんな中、「研究員ではなく生産者になりたい」という思いが日毎に強くなり、3年後に思い切って退職したそうです。

その後は、豊後大野市清川町にある〈お花屋さん ぶんご清川〉に研修生として就農。県内最大規模のキク農家であり、国内外から多くの実習生・研修生を受け入れて独立を支援している企業です。そのノウハウを存分に吸収し、大学から県庁時代、就農までともに同じ道を歩んできた泰嗣さんと、2020年に独立しました。

2023年に法人化したのは、「雇用を実現したかったから」という泰嗣さん。「自営だと自分のペースで働けますが、収入に波があります。その点、会社を構えて人材を雇用すれば、毎月給料が出るので生活が安定すると思ったんです。それに、常に人がいることで作業がまわりやすくなるので、経営が安定するとも思いました」。

現在は約3,700坪の圃場でスプレー菊などを栽培しており、正社員2名+パートさん8名を雇用。〈お花屋さん ぶんご清川〉を通じて、東京や北海道へ出荷しています。

ツアーメンバーは、収穫体験をさせてもらうオランダ式のハウスの中に案内され、まずはおふたりの体験談に耳を傾けました。

青空の下たたずむオランダ式のハウス

印象的だったのは、「ありすぎて忘れてしまうほど大変なことが多いけれど、今年の夏は暑さ対策に苦労し、単価が高い時期に花が咲かず悲しかった」という翔子さんの話。地球温暖化の影響は、やはり農家にとって深刻な課題だということを思い知らされるエピソードでした。

そんな厳しさもありながら、「嬉しいことがあると、そういう大変なことは帳消しになる」という泰嗣さんの言葉に、農業の大きなやりがいも感じられました。

オランダ式のハウスの中で講話に耳を傾ける参加者

Q:菊を選んだのはなぜですか?

A:本当はハウスみかんを育てたかったんですが、木を植えて収穫するまで(=収入が得られるまで)に3年間かかることや、大分県が推進している品目を育てることで、様々なサポートを受けやすくしたいと思ったからです。定植する時期をズラし、1年間通して出荷ができるメリットもあります。

Q:農業を始めるにあたって心構えを教えてください。

A:農業をする企業も増えてきたので、就労する方法と、経営者になる方法の両方があると思います。就労する場合は、一般的な企業に就職するのと同じく社会人として基本的な心構えがあれば十分。そして経営者になる場合は、お金も大事ですがそれ以上に“パッション”がすべて。なぜなら挫けそうになることが多く、続けようという気持ちがないと終わってしまうから。それさえあれば、上手くいきます。

農業にかける情熱が伝わってくる感動的なお話の後は、収穫体験。ヘタの部分をハサミで切りやすかったピーマンと違って、キクは刈り取り専用の小さな鎌を使うので、ちょっとコツが必要。慣れるまでに時間がかかることに大変さを感じつつも、やはり美しいお花は収穫できた喜びもいっそう大きなもの! キクを手にした参加者の皆さんには、自然と笑顔が浮かんでいました。

ハウスの中で美しく咲く菊

若杉さんが育てた菊と触れ合う参加者の皆さん

若杉さんが育てた菊と触れ合う参加者の皆さん

若杉さんが育てた菊と触れ合う参加者の皆さん

最後は、出荷のための調整を行う選花場を見学させていただき、本日の日程終了。

ちなみに、9月末とはいえ、よく晴れた夏日だったこの日。収穫体験でひと汗かいた皆さんからは口々に「こんな暑い中で作業をする農家さんがいてこそ、農作物が手に入る。感謝しかないですね」という感想も。農業という仕事のありがたみも、じんわりと心に染みた1日となりました。

ツアー参加者の感想

今回ツアーに参加した皆さん

大分市・20代

福祉の仕事に就いてから障がい者の方々の賃金の低さを知り、状況を変えられたらいいのにと思うようになりました。将来は、就農して障がい者を雇用できる立場になりたいのですが、今回、実際に農家さんを訪ねてみて、まとまった資金が必要なことなどが分かり、もっと経営の勉強もしなければと感じました。

大分市・30代

農業はまったく経験がなく、いまのところ「興味がある」というだけ。どうやって育てているのか農家さんから実際にお話を聞き、現場を目で見ることができて、一つひとつ全てのことが勉強になりました。

大分市・40代

長年、会社に勤めてきましたが、40代に突入し「将来、ずっとこのままで良いのだろうか。いつか自分の好きなことを仕事にしたい」と考えるようになりました。そんな気持ちと、大家さんが農業を志した理由が似ていて、とても共感。まだ具体的に就農を決めているわけではありませんが、ツアーに参加してどんな世界かを知ることで、選択肢のひとつに加えることができました。

宇佐市・50代

親が亡くなった後、荒れてしまった畑を再生させたいと考えています。若杉さんが「経営が成り立つ品目を選んだ」と言っていたのが印象的。県内でも地域ごとに栽培が推奨されている品目があり、それを選ぶかどうかで受けられる行政のサポートが変わってくると知って、経営面から考えると単に“自分が育てたいもの”にこだわるだけではなく、補助の有無を調べることも将来を左右する大事なポイントだと思いました。

臼杵市・60代

2年前から家庭菜園を始め、動画サイトを見ながら季節ごとに野菜づくりを楽しんでいます。やってみるとタタミ1畳分の畑があれば自家用の野菜は賄えることが分かり、使われていない畑が多くなった昨今、周囲の皆さんにも野菜づくりをおすすめしたいと思って、勉強をするためバスツアーに参加しました。農家さんから直接、知識を教わることができて良かったです。

葉のライン

大分県では、新規就農にまつわる様々な情報を「農林水産業・就業総合サイト」で発信しています。農業従事者向けの子育て支援制度などもありますので、詳しくはこちらからご覧ください。
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