おおいた就農女子応援ツアーレポート第二弾

9月に引き続き2024年12月1日(日)に、第2弾として開催された「おおいた就農女子応援団バスツアー」。

今回も「農業を仕事にするってどんな感じなの?」「未経験だけど興味があって」「自営で就農したい」など、農業に対するさまざまな想いをもつ応募者と同伴者の総勢24名がツアーに参加してくれました。

朝9時。大分駅から貸切バスに乗り込み、いざ出発!今回は佐伯市内にあるトマト生産農園と、トルコギキョウ農家さんを訪ねました。

当日は、師走とは思えないポカポカ陽気と雲ひとつない絶好のお天気!車内から遅めに色づいた紅葉を眺めつつ、レポーターの野口真美さんによる司会・進行のもと、みなさん徐々に緊張もほぐれ和やかなムードのなか目的地へ。

ツアー当日、バスの中の様子

訪問先①サニープレイスファーム(佐伯市)

最初に訪れたのは、佐伯市女島でフルーツトマト「朱々」をメインに生産する、農業生産法人〈(株)サニープレイスファーム〉です。

こちらの農場は、港湾運送を手掛ける「大分港運(株)」が2010年に設立。リーマンショックで本業が苦戦し、新たな事業を検討していた時に、県が塩を取り入れた高糖度のフルーツトマト栽培の農業参入者を募っていることを知り、当時まだ珍しかったフルーツトマトに将来性を感じたのが、農業へ参入したきっかけなのだそうです。

到着後、まずは広大な農場にズラリと立ち並ぶハウスのスケールに驚きます。敷地の広さは1.8ヘクタール、東京ドームグラウンドの1.5倍もの広さ!現在年間約140トンものトマトを出荷しています。

青空の下にたたずむ(株)サニープレイスファーム

豊かに実るフルーツトマト

こちらのトマト栽培の特色は「低段密植による水耕栽培」という方法。苗の成長の途中で食塩水を加え、苗の成長をストップさせることでトマト自体に糖度と旨味がぐんぐん凝縮され、高糖度なフルーツトマトになるのだとか。また低段なのでマトが密集して育ち、短期間で生育し収穫できる仕組みになっています。

(株)サニープレイスファームのハウス内の様子

現在〈サニープレイスファーム〉では正社員のほか、約25名のパートさんが働いています。そのうち約7割が女性、年齢層も60〜70代の方も多く活躍されているのですが、今回は7名のパートさんに、いろいろなお話を伺うことができました。

(株)サニープレイスファームで働くパートの方々のお話を伺う参加者

Q:この仕事をはじめたきっかけは?

A: Aさん「前職は接客業をしていたが、接客以外の仕事をしてみたいと思ったから」
Cさん「医療機関を定年退職後、セカンドキャリアを積みたくて」
Bさん「介護の仕事をしていたが、農作物を育てる仕事で癒されたいと思ったから」

Q:この仕事の楽しいところやメリットは?

A: Eさん「自分の作ったものがたくさんの人に食べてもらえること」
Bさん「無理なく自分のペースで働ける」
Cさん「年齢にかかわらず長く続けられる安心感がある」
Aさん「朝は早いが、仕事の終わり時間も早いので、家事が余裕をもってできる」
Dさん「とれたて新鮮なトマトを買って帰れるところ!」

Q:大変なことは?

A: Fさん「夏の暑さ。自分で対策もしていますが日焼けは免れません!でも冬は暖かくて快適」
Dさん「朝早いので最初はちょっと大変でしたが、慣れれば平気」
Gさん「収穫量に波があるので、あわただしい時は大変」

皆さん、雇用されて農業に取り組むメリットや、やりがい、デメリットをリアルに教えてくださいました。

お話の後は実際にトマトの収穫と仕分け、袋詰めを体験!

赤く実ったトマトを1個ずつ丁寧に、優しくもぎ取っていきます。トマトの収穫自体は体に負担もかかりにくく、女性でも作業しやすいようでした。

収穫したトマトは糖度を計測し、糖度ごとに仕分けされ、袋詰めをします。糖度が8度以上のものが「朱々」、7度以上は「塩熟」という品名で、7度未満のものは規格外として選別されます。ちなみに一般的なトマトの糖度は約4〜5度ということなので、こちらのフルーツトマトは規格外のものでも糖度は高め。看板商品の「朱々」糖度の高さは、かなりなものであることがわかります。

ツアーメンバーは、「このトマトの糖度はどうかな?」とちょっとドキドキしながら計測。自分が選り分けたトマトが商品になるまでの作業を体感しました。

フルーツトマトの収穫体験をおこなう参加者

フルーツトマトの糖度計測をおこなう参加者

フルーツトマトの袋詰め作業をおこなう参加者

最後に代表取締役の山田さんが、「夏の猛暑や気候変動で収穫量が安定せず、大変なことも多いですが、“朱々”を県内だけでなく、全国の人に認知してもらうための施策や、質の高いフルーツトマトづくりについてチャレンジを続けたい。そのひとつとして今後、加工品の開発・販売もやっていきたい」と、今後の展望もお話してくださいました。

フルーツトマト栽培についてたっぷり学び、体験した後は、おひるごはんタイム。この日のメニューは、別府市の〈おしゃべりなスプーン〉に作ってもらったオムライス弁当。

ケチャップライスには、〈サニープレイスファーム〉で採れたトマトをたっぷり使用。濃厚なトマトの風味とデミグラスソースがかかったオムライスは超・美味! 皆さん、ご満悦でした!

オムライス弁当

訪問先② 花花舎(佐伯市)

次にお邪魔したのは、佐伯市木立で「トルコギキョウ」を栽培する「花花舎(はなはなはうす)」。

こちらは黒岩留夫(とめお)さんと眞由美さん、次男のお嫁さん、三男のお嫁さんもパートで働く、家族で営む個人経営の花き農家さんです。現在、約17種類のトルコギキョウを栽培しており、大分をはじめ東京や大阪、長野などにも出荷しています。

眞由美さんとお嫁さん

ハウスの中で眞由美さんの話を聞く参加者

まず「ようこそ花花舎へ!今日はお会いできるのを楽しみにしていました」と、明るく朗らかに挨拶してくださった眞由美さん。

ちなみに眞由美さんは留夫さんのことを、お付き合いしている頃から今もずっと「留夫君」と呼んでいるそう。にっこり微笑む留夫さんも優しい人柄にあふれていて、とっても仲の良いご夫婦に心なごみます。

そんな黒岩ご夫妻は今から約30年前、留夫さんの「バラ栽培をしたい」という夢をかなえるため、バラ栽培を始めます。しかし、その2年後バブルが崩壊。赤字と借金が膨らみ窮地に陥ったのを機に、バラからトルコギキョウへ転換。「あの時は、にっちもさっちもいかなくてね。でも生きていかなきゃいけなかったので、バラほど農薬などの費用もかからず強い花へ栽培品種を変えたの。トルコギキョウは、苦しくても強くふんばってきた私たちにちょっと似てるかな(笑)」。トルコギキョウへの愛情を込めつつ、当時を振り返ります。

美しく咲く白いトルコギキョウ

その後も夫婦で休むことなく、時には寝食を忘れトルコギキョウ栽培に奮闘し、借金も返済。

そして昨年秋、次男のお嫁さんである慶子さんが介護士の仕事をやめ、本格的に黒岩さんご夫妻の仕事に家族協定を結び参入。親子継承し、後継者として家業を担うこととなったそうです。

「仕事も家庭のことも、どちらも自由にやらせてもらっていて。お義父さんとお義母さんには感謝です」と、慶子さんこと「けいちゃん」は、現在高校生と小学生のママでもあります。毎日仕事と家事・子育てをしながらトルコギキョウ栽培の担い手となるため、日々奮闘中。頼もしいですね!

トルコギキョウのハウス内の様子

また眞由美さん自身も、3男1女と4人のお子さんを育てながらバラ、トルコギキョウ栽培をしてきた「働く母」としての先輩でもあります。

「3人の息子たちにバラのつぼみ取りの手伝いもしてもらったし、長女の時は徹夜で作業する傍ら車で娘を寝かせ、そのまま朝ご飯を食べさせて学校へ送り出すようなこともありました。大変な日々だったけど、留夫君と協力しながら一緒に農業と子育てができたのは、いい思い出です」と目を細め語ってくれました。

次に眞由美さんがツアー参加者へ「新規就農したい方へのアドバイス」と題し、話してくださいました。「産地が確立した品目を作るといいよ」「一人で抱え込まず、県や市の方などとにかくいろんな人を上手に頼ること」など10の項目に分けてわかりやすく紹介。

中でも印象的だったのは、「農業をやると決めたなら毎日、毎月、毎年の積み重ねが大切。課題はたくさん出てくるけど、そこから逃げないこと」「人と関わること。そしてご縁やつながりを大切にし、周囲の支えに感謝すること」という言葉。

「私たち夫婦は借金もして大きな失敗も経験しました。でもそれは高額な人生勉強代だと思っています。あの失敗があったからこそ、時に夫婦ゲンカもしたけど、常に考えながらがんばって歩んできました。これからもおごることなく、“美しい無言の命”に向き合っていきたい」と眞由美さん。

これまでの苦労、トルコギキョウにかけた想いと熱意に思わずジーンとくるものが。参加者の皆さんもしっかりと農業への想いと希望を胸に刻んでいました。

ハウスの中で眞由美さんの話を聞く参加者

また参加者からは「夫婦で農業を始めたいと思っているのですが、繁忙期と閑散期ってどんな感じですか」「今、実際にトルコギキョウを作っているんですが、マルチシートはしなくてもいいですか?」など、それぞれに眞由美さんへ質問する場面も見られました。

お話の後は、最後にトルコギキョウが栽培されているハウスの一部を、眞由美さんのアドバイスを聞きながら見学させていただきました。

そして帰りには参加者全員にトルコギキョウの花束のプレゼントも。皆さん色とりどりの花を手にして笑顔になりました。

ハウスの外で眞由美さんの話を聞く参加者

トルコギキョウの花束

ツアー参加者の感想

今回ツアーに参加した皆さん

30代

夫婦で自営業をしたいと考えており、2歳の娘と一緒に参加しました。実際にトマトの収穫を体験したり、農業をされている方の声を聞けてよかったです。特にコミュニケーションは大切なんだなと感じました。これから独立に向けてどういう形で勉強すればいいか考えている段階なので、大変参考になりました。

40代

今は趣味程度で花を育てていますが、だんだん本気で農業をやってみたいと思い参加しました。実際に花き栽培の農家さんの話を詳しく聞けて勉強になりました。今後の方向性によっては、もっといろいろ聞いてみたいなとも思いました。

40代

今は家で家庭菜園をしている程度で、特にトマトの水耕栽培を見たのは初めてで興味深かったです。将来は農業を仕事にしたいなとも思っているので、今日の体験を参考にしたいと思います。



今回訪れた2件の農場・農家さんから感じたのは、「ひたむきに良いものを作る」という想いと、手塩にかけて育てた生産物に対する愛情と誇り。農業のやりがいと喜びを実感した貴重な1日となりました。

また自営・雇用どちらの就農が自分には最適かなどライフスタイルに応じた働き方の参考にもなったようです。

葉のライン

大分県では、新規就農にまつわる様々な情報を「農林水産業・就業総合サイト」で発信しています。農業従事者向けの子育て支援制度などもありますので、詳しくはこちらからご覧ください。
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